プロパンからIHに変わりました
僕自身が...
なんのはなしかって
今、取り組んでいる
映像の仕事のはなし
熱量の構造を根本から変えなければならない
そしてもっともっと
細部までを知らなければならない
知らないことが多すぎる
その鍛錬と学習に
数100時間を費やした
あともうちょっとで独り立ちだ
8月いっぱいで己の価値が決まるのだ
ある日のこと
とある現場から会社に帰ると社長がいた
社長は15年
TV局のディレクターを務めた猛者だ

「今日のってすぐ見る事できます?」
久しぶりに会った社長は
どれくらい成長したかを確認する為
作り終えたばかりの僕の作品物を
見たいと言ってきた
映像を見終えた社長が放った一言
正直な感想を言います
一番最初の右も左もわからない時に
作らせたものの方が良かった──

そりゃそうだ
今、関わらせてもらっているのは
アートじゃない
商業デザインに
ねじくれた自己主張を持ち込んだ
モテないオーラ全開の
人間を死ぬほど見てきた
そこでの自分だけの唯一無二の怪作なんて
場違い中の場違いということと理解していた
そうならないように
模範のど真ん中を狙い
そつなく置きにいっていた
下手なオリジナルをやるくらいなら
世界一売れてるものの紛い物のほうが
100倍マシだ
なにかやろうとか
なにか見せようは
自分の作品物でやればいいこと
逸脱なんてもってのほかだ
ところが
ダメ出しをもらいすぎて
自我を押し殺すうちに
素敵な作品ではなく
最低ラインをクリアする為だけの作品に
成り下がっていたということか
どんなジャンルであれ
根幹にある熱量は
例外なく必要なのだ
僕は嵐の最中で削ってはいけない筋肉まで
落としてしまっていた
苦い夜をやり過ごすには
想像以上の労力を費やした

撮影された素材でもなく
使われる楽曲でもなく
人や会社でもなく
自分に負けていたということ
自分だけにしか映し出せないもの
自分だけにしか産み出せないもの
頑なに信じてきた
どこでそれを置いてきてしまったのか
「最初はもっと繊細な編集してましたよね」
知らぬ間に穿たれた大穴に
薄っぺらいコーティングを重ねて
見えないようにしていた
男女間で聞く
『愛のない性行為』の
それ以下だ
自己すら満たされていないのだから
お世話になっているエディターさんには
日々、アドバイスを頂いている
お金を払って学校に通う生徒さんでも
得られないような知識や技術を
吸収させてもらっていると思う
しかし
そんな中で
ひょいと社長に会うと
根本をも覆される
真逆の名アドバイスを頂く

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