近所にできた友達の話
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第2話
迷犬ゼウスの散歩は毎日の日課
その日の夕方も
いつものコースを散歩させていた
家を出てすぐの角を曲がると
数メートル先で
男の人が煙草を吸っていた
建物の中が禁煙だから
裏口の扉から外に出て喫煙していたのだろう
ゼウスが馴れ馴れしく近づかないように
注意してリードを短めに持ち直すと
男性はこっちを見るなり
「アッキラくーん!」と周囲に反響する
大声で言い放った
恥も外聞もない感じ...
先日仲良くなったSちゃんと確信した
え?ここって居酒屋だよね?
働いてるの?
「うん、知り合いの店でちょっと手伝ってたんだ」
そうなんだ
そういや、例の彼女と仲直りしたんでしょ?
「なんで知ってんの?!
誰かから変なこと聞いた?」
いやいや
あなたがLINEしてきたんでしょうよ
そもそも共通の知り合いなんていないでしょ...
「そうだよね、いや、
最近、この近くのバーに行ってるんだよね」
へー、大通り沿いの?
「そこじゃなくて、すぐそこの店
今日、仕事終わったら
そのバーいくからアキラくんもきてよ
やべぇ、戻らないと、またね」
Sちゃんは
短くなった煙草をぶっきらぼうに揉み消すと
扉の中へと消えた
そういや名古屋だかどこだかで
数店舗お店を経営していたと言ってたな
月に多い時で2千万くらい稼いでたって
ゼウスが帰りたそうな顔をしていたので
家に戻ることにした
ん?
まてよ、すぐそこのバー?
すぐそこって指差してたけど
そんな店なんてないよな
遅い晩御飯を食べ終わる頃
スマホが鳴る
Sちゃんだった
一言『BARだよー』って...
どこの?
『家を出てまっすぐ10歩あるいて
右手の階段を降りてきて』
は?
言われた通りに歩くと
本当に右手に階段があって
恐る恐る降りてみた
美容室かなにかなんじゃないの?
え?!
彼の言うことは本当だった
ディスコスペースがあって
DJがレコードを回している
こんなデカい店が家の前にあったとは
知らなかった
外には看板も何もないから
わからなかったのか
ガラス越しに
ビールをチェイサーにテキーラを
あおるSちゃんの姿が見えた
やってんな...
入るなり店主が僕にこう言った
「どうもどうも、この人が噂の!」
どんな噂をされていたのか聞きたくはなかったが
「マスター、アキラくんはここの前に住んでるの
寿司屋〇〇のM子いるでしょ?M子
あの子と同じマンション」
マスターがもの凄い剣幕で
そんなこと言っちゃいけないとSを諭した
それもそのはず
僕らの2つ離れた席にいた若い男性客は
なんと、その寿司屋の職人さんだったのだ
職場の女性の個人情報を
公の場で安易に口走ったのだから
店主としてはマズかったのだろう
後の話からすると
女性がそこに住んでるという情報も
マスターが教えたものらしかったから余計だ
Sはなにも悪びれることもなく男の子に
「K美もいたでしょう寿司屋に」
というと
「え?知ってるんですか?K美さん元気かなぁ
厳しくていつも怒られたけど、いい人だったなぁ」
と、男の子は微笑んだ
しっかし、Sちゃんは誰でもよく知ってんなぁ
と、皮肉めいた言い方を僕がするも
「そうでもないよ、マスター!アキラくんにも
テキーラ俺からご馳走して!」
と、漢字が書けた少年が
大人に褒められたようなテンションに唖然とした
Sちゃんは
ロックグラスにガボガボと入った
テキーラをドン!と僕の眼前に置いた
一杯目に頼んだ
ビールを飲みかけていたところだったから
偶発的ではあるが
ビールチェイサーにテキーラを飲む
キ○ガイ2人の絵面になった
不思議な居心地の店だった
近所のあらゆる人種が集まるというのが
納得できた
「アキラくん!
また彼女とケンカしちゃってさぁ
今度のは修復不能の絶体絶命なんだよね
アキラくんこういう時どうしたらいい?」
基本的にいつでも絶体絶命の彼
そうなんだ...またケンカしたのかい?
「どれだけ電話しても出てくれないんだよ
もうほんとに無理だからの一点張りでさ」
すると、反対の寿司屋の男の子がこっちを向いて
「K美さんの話が出て懐かしくなったんで
元気ですか?ってLINEしたら返信がきて
ここのバーで飲んでるって言ったら
今からK美さんここに来るみたいです」
なに!!
フルーツバスケットの如く
大騒ぎしだしたSちゃんとマスター
どうした?なに?
俺と同じマンションの女の子がくるの?近いから
「M子なんてどうでもいいんだよ!
アキラくん...」
え?
「そのK美が彼女なんだよ!」
いやぁ、はぁっ?!
フルーツバスケットに緊急参戦する僕
ここにいること彼女は知ってるの?
「知るわけないだろ!」
DJがレコードを切り替えたのか
店内が無音になった
ガチャっという音に振り返ると
そこにK美がいた
「Sちゃんなんでいるの〜!」
BGMがハードなHIPHOPに変わった
続く
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