すべて実話であるため
登場人物や都市名は伏せさせてもらう
ある会社員男性
30代妻子持ちA君の話
その年の春
A君が勤める会社には
新卒の若者達が入社し
新入社員歓迎会が行われたそうだ
その中に
異彩を放つ美人女性M子がいた
M子は18歳
世の中の右も左もわからぬ社会人の卵だ
そんなM子に一目惚れしたA君は
猛烈なアプローチをM子に仕掛けた
A君の社内でのポジションや
大人の魅力に惹かれたのか
妻子持ちと知りながらも
M子はA君の男力に落ちた
社内での不倫である
堂々と交際できるはずもなく
気づかれないように粛々と逢瀬を重ねる二人
卒業して社会人になり初めての大人の恋愛
十代の甘美な果実の虜になった妻子持ち
二人の関係はエスカレートしていき
肩身の狭い中で膨らみ続ける熱情のゴム風船は
行き場を失ったまま大爆破する
「離婚してお前と一緒になる」と
A君がほのめかしたのか定かではないが
「いつになったら奥さんと別れるの？」と
発狂したM子のヒステリック押し問答によって
関係は会社内の一部に大っぴらになってしまう
人間、逃げ場を失うと
そこからの展開は早い
どちらを取るの？という
スポットライトを当てられたA君は
子供や会社内での立場
世間体を優先し
M子との関係を断つ決断をした
どれほどの修羅場だったのかは
想像するに容易いが
どちらかが退社する事もなく
なんとか鎮火したように見えた
しかし
二ヶ月もしないうちに
M子の寿退社が発表されたのだ
え？誰と？どの期間でそうなった？
なんてスピード婚だ
中古車屋で車を購入したら
前のオーナーのタバコの火が
まだついていたようなレベルだ
誰がどう見たって
これは紛う事なき
『腹いせ婚』である
知ってか知らぬか
A君への復讐のために
M子と婚姻関係を結ばされた
新郎さんも気の毒だ
『さっさと別れて
ワタシと一緒にならなかったから
こうなったのよ』
という事なのだろう
退社時のM子は不自然な作り笑顔で
目だけは笑っていなかったという
ところが
それから半年もしないうちに
M子の旦那さんが
病死したという話をきいた
まだ二十代だったそうだ
ある25歳独身男性K君の話
K君が勤める会社に
新人のバイト小錦ちゃん（仮名）が入った
その名の通り小錦ちゃんは
身長170センチ超えの
体重100キロ肥え超え（推定）
マシュマロマン以上ミシュラン未満の
可愛らしい女性だったそうだ
K君と同じ歳と知った小錦ちゃんは
K君に興味を持ちはじめ
K君の服装の系統や髪の色まで真似をし始め
K君が夜働く飲み屋さんに足繁く通い
K君が出演する舞台にも足を運ぶ
彼のすべてを知りたい小錦ちゃん
誕生日・クリスマス・バレンタイン
ありとあらゆる工夫を施した
贈り物を捧げる小錦ちゃん
プライベートという鉄の扉までもを
全体重をかけてこじ開けようとする彼女
全身を震わせながら真っ赤な顔で
それを開けさせまいとするK君
さらには
K君の親にまでどうにか近づいて
外堀から逃げ場を無くそうとする小錦
それはのちに仕事に穴をあけるほどの
重厚なやり口であった
言葉では拒否し続けてきたK君も
同じ職場にいるものだからと
荒っぽいやり方は避けていたのだが
さすがにここまでくると
いよいよ鉄槌を振り下ろさねばならぬか
と決心をする
ある日K君は
迷惑だからすべてやめてほしいという事を
小錦ちゃんへ告げる
揺れる心
揺れる贅肉
ガクッと肩を落とす小錦ちゃん
彼女の千秋楽は黒星で幕を閉じた
それを機に大人しくなった小錦ちゃん
振られたショックか彼女の身体は日に日に
小さくなっていったという
職場の人の話では
ジム（部屋？）で鍛えて（稽古？）
食べ物も控えて（ちゃんこ？）
毎晩、車でナンパスポットへと
出向いているとのことだった
とりあえず職場内に迷惑が掛からなければ
どうでも良かったので一件落着にみえたK君
ところがある日のこと
小錦ちゃんの衝撃の一言を聞く事になる
子供ができて結婚するから辞めます
まじかよ！
聞けば会社経営の大人しい独身男性に
なかば脅しのように迫って
どうにか身籠ったというのだ
（関係者談）
本人も責任取らせてやると
笑いながら豪語していたという
それは
運転中、後続車にぶつけられた修理代を
せしめてやる時のトーンと一緒だったそうだ
小錦ちゃんが去ってからというもの
平和が訪れたというK君とその職場
しかしその後
小錦ちゃんの旦那さんが
病死したという新聞記事をK君は見ることになる
30なかばの病死だった
『腹いせ婚』の末路
人の心の奥底でどよめく【情】
愛すことも
憎むことも
同じ温度と力量なのだろう
人の不幸の上に幸せは成り立たないというが
まさに愛情と憎悪のseesaw game
他にも数件の実例があるのだけれど
長くなってしまうので
またライチポケットレディオでお話ししよう
この記事へのコメント