よく聞く生体系の話
連日の過酷な肉体改造によって全身の筋肉が悲鳴を上げていた。
今も肉体の各部位を結合するネジが弾け飛び
焼けるような痛みが全身を駆け巡る。
今夜はアコギを持って路上で歌いに行こう!
なんて計画を立てていたのだが..
それも苦しそうだ。
そんな時
友人が、知り合いの整体師を紹介するからと
こちらの返答を聞かずして
半ば強引に予約を入れてしまった。
「今から来る人は凄腕のベテランだから
ちょっと痛いかもしれないけど一発で良くなるよ!」
その言葉に吸い込まれ、僕も用意をはじめた。
(住所と名前を教えただけだが本当に大丈夫なのだろうか…)
それにしても来るのが遅い
予約時刻の二十分を過ぎようとしている。
友人曰く
田舎のマッサージ業界は絶滅の危機に瀕していて
ただでさえ少数な上
その中の精鋭だから
多少の待ち時間は覚悟しておいてくれ、と
解せるような解せないような
いつもの煙みたいな話をされた...
もう少しだけ待ってみる事にしよう。
絶滅の危機…
絶滅の危機といえば
こんな話を思い出した。
草食動物を捕食する肉食動物が伝染病で死滅した。
すると
捕食から解放された草食動物の残党が
山の草木を食い荒らし
満たされた個体は大きく成長し
どんどん繁殖して数を増やしていった。
増える草食動物
消える草や木々
一年後
山の草木はすべて食い尽くされ
草食動物は飢えに苦しみ絶滅に瀕した..
よく聞く生態系の話
まだ来ないのか…
しかし、どうしても今夜は歌いたかった。
路上ライブが無理なら、いっその事カラオケでも良いか
今や、どこにでも24時間やっているカラオケ店はあるのだから。
カラオケ店…
カラオケ店といえば
こんな事を思い出した。
僕が学生の頃
住んでいたエリアにカラオケ店が二店舗あった。
どちらも個人経営の小さな店だった。
御世辞にも綺麗な店ではなく
個人経営のレンタルビデオ屋に毛が生えたレベルだったが
双方それなりのサービスでなんとか集客はしていたと思う。
しかし、そこに三店舗目が参入してきたのだ
参入してきたのは都会的で前衛的な外観
驚くべき低価格と、それに抱き合わせた飲み放題プラン
そして複数の機種を選ぶ事が出来た。
言わずもがな皆『ニュータイプ』に飛び付いた。
古くからあった一店舗は
あっという間に閉店に追い込まれ
残された一店とニュータイプとの
血で血を洗う価格破壊戦争が始まった。
むこうが価格を下げれば
こっちも価格を下げる
電撃低価格合戦
その我慢比べも結果は見えていた。
肉を斬らせて骨を断つ
圧倒的資本力に押し潰され
残された最後の一店は
ある日
もぬけの殻となっていた...
ハナからこれを狙っていたかどうか定かではないが
独占状態となった『ニュータイプ』は徐々に価格を上げて
いつしか普通のカラオケ店となった..
一年後
『ニュータイプ』は絶滅に瀕した...
よく聴く声帯系の話
インターフォンの音が鳴り響く。
絶滅の危機に瀕する少数の精鋭が舞い降りたのだ!
一回の施術で翌日には完治するという魔術に救われる!
玄関まで迎えに上がるとしよう
それでは皆の衆
また逢う日まであばよ
よく効く整体系の話
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