あの時の餃子は何処へ...

餃子ばかりを食べていた時期があった。

ダイエットと肉体改造に適している事と、時間が無い時でも食事をサッと済ます事が出来たからだ。

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極度のハマり症という事もあって
色々な所で餃子を食べて回った。

パリパリしたものやしっとりとしたもの
小粒から巨大なサイズのもの
ありとあらゆるものを食べては
一喜一憂をしたものだ。

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僕にとって餃子といえば
世界でひとつだけ
記憶の中にただひとつだけ存在する
『唯一の餃子』
そいつと出逢ったのは

数年前のある夜

たまたま通りかかって立ち寄った
営業しているのかも怪しい個人の店だった。

入店すると、カウンターにはおばさんが座っていて、お茶を飲んでいた。なんの店なのかもわからないまま僕もカウンター席に座りキョロキョロしていると、おばさんが話しかけてきた。おばさんは店主だったようで、僕を客として認識した後も座ったまま「ビールでいいかい?」と言い、頷くと瓶ビールをコップに注ぎながら、今作れる料理を説明し始めた。

コケだらけの安っぽい金魚の水槽が、強めのライトに照らされていて、知らない人の家に上がり込んだ気分になった。言い訳がましく喋り続けるおばさんの話を聞いて、今は数品しか出来ないと理解した僕は、消去法で餃子を頼んだ。

期待値ゼロのまま待つ事数分後
そいつは出てきた。

それは一見すると、どこにでもあるようなものだったが、暗緑色かがった血色の悪い表面が不信感を募らせた。

タレの作り方を説明されて、その通りに配合したものに浸けて一粒を口に放り込むと口内がぶっ飛んだ。

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餃子は僕の裏切り方を熟知していた。
手練れだった。
あのモチモチ感、ニラとニンニクの過激さ
10しか入らないとこに100を詰めた感じ。
手作りと思われる皮が旨味の全てを包括していた。

あの餃子の味と食感が忘れられず
また食べに行こうとしたが
もう店はなかった。

後にも先にも
あの餃子以上の餃子には未だ出逢っていない。

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いつかまた逢えるかな

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