必要悪という言葉がある。
身近な例で言うと『暴対法』。この法の改正により、かつて一般市民を脅かしていた『傍若無人な暴力』を反社会的勢力は自由自在に振りかざす事が困難となった。末端の構成員がちっぽけな悪さをしようものなら[使用者責任]という新ルールで組織のトップがしょっぴかれるという規律になったからだ。それに伴い街に平和が訪れるのかと思いきや、反社会的勢力が弱体化した事で、それまで大人しくせざるを得なかった不良外国人が台頭し、『半グレ』と呼ばれるどこにも所属していない日本人の不良達が組織犯罪化し、益々の治安悪化を産むケースが後を絶たないという現状である。
警察と裏社会はズブズブの関係と聞いた事がある(真相は定かではないが)善と悪の絶妙なパワーバランスを持ってして『平和』というものの均衡が保たれているのかもしれない。僕はそれを『必要悪の天秤』と呼んでいる。
警察と言えば、最近、警官の発砲事件がニュースを騒がせた。ひと昔前だと警察官の発砲=タブーという風潮があった気がする。正確なソースはないが、やむを得ない理由があったとして一度でも路上で発砲した警官は出世できないという話を昔聞いた事がある。今思うとそれは当時の拳銃を出す必要がない平和ボケした日本に対しての皮肉が都市伝説化したものだったのかもしれない。ところが、最近起きた警官の発砲事件に対してのマスコミの報道を見る限りでは、心なしか好戦的というか「良くやった!」とすら思える報道に変わりつつあるように感じた。あからさまに凶悪な人間が凶悪犯罪を犯す時代ではなくなってきている事もあるからか、日本の治安も国の体質も変化して、ある種のパワーバランスが変化しているのかもしれない。
余談ではあるが、東京五輪にあたり日本の海外に対してのおべっかというか不自然な過剰接待なんかもキナ臭すぎて仕方がない。それは紛れもなく担任の先生が家庭訪問に来る時だけ発生する母親のオホホ具合と言えよう。
話は子供の頃に遡る。少年時代、誰もが憧れたウルトラマン。正義の味方であるウルトラマンが地球を侵略しようとする怪獣に立ち向かい、人間離れした力や必殺技を尽力して怪獣を倒す。子供たちは歓喜の声を上げたものだ。しかし、善と悪のパワーバランスが偏っていたらどうなっただろう。単に物語として面白味に欠けるものになるだけでなく、どちらが正義なのかという論議が飛び交うのではないだろうか。ウルトラマンをアメリカに置き換えて、怪獣をイラクに置き換えると途端に腑に落ちてしまうのは何故だ。仮に今の世の中にウルトラマンというものが存在していたら「虐待」だの「絶滅危惧種の保護」だの騒ぎ出す人間が出て来るのではないかと思うと寒気がする。
必要悪とは直接関係のない話になるが、数日前にYouTube動画を観ていると、関連動画かなにかから、あるユーチューバーの動画へと飛んだ。
名前は敢えて出さないが、そこそこ有名な人で僕でも顔と名前は知っている男性だった。
動画の内容とは、最近、ある有名芸能人が素人ユーチューバーとコラボしている事に対しての『悪口』だった。トークスキルも微妙で、ただの愚痴としか思えない内容。嫉妬じみた素人の悪口なんて面白くもないから、最後まで観る事にはならなかったが、なんだかなぁと...モヤモヤした。
嫌いだったらわざわざその人の話をテーマにする必要がないのでは?と思ったが、タイトルが[◯◯◯◯◯◯の◯◯]って、でかでかとそのお笑い芸人のコンビ名と個人名をタイトルにもサムネにも入れている事から、その芸能人の名前を使ってアクセス数を稼ごうという思惑がモロに露呈していた。その芸能人とは、ある事があって、テレビから姿を消した芸人さんで、世間のイメージも今は悪いらしく、その好感度の低さや皆が抱くであろう嫌悪感を利用して、自分自身の好感度アップを狙ったんでしょうが、最後まで観る価値はありませんでした。
彼の悪口も必要悪なのか?
芸能人と言えば主戦場はテレビ。かつて、80〜90年代には爆発的な視聴率を誇った数々のテレビ番組があった。そこから綺羅星の如く誕生した華々しいスターたち。一流の俳優と歌手とお笑い芸人が毎日ブラウン管から飛び出していた。もちろん思い出補正もあるでしょうが、誰もがテレビ中心の生活だったと言っても過言ではないだろう。
時を経て、伝説的な長寿番組も次々と打ち切られ、眩しかったスターたちも歳をとり楽しかった大きなテレビは薄っぺらくなり箱に詰まっていたスターたちは液晶の中では生きられなくなって気付いた時には死んでいた。
面白かったテレビ番組が大人の都合でインスタントラーメン化した今(あくまで独断と偏見だが)テレビ離れという現象も起きている。国民を釘付けにしたスター不在の今、インターネットに移行していく若者も多いのだとか。動画サイトや動画配信サービス。一番有名なところがYouTubeなのでしょうか。小学生の将来の夢ランキング一位がユーチューバーなんて話も耳にします。僕も毎日利用しています。非常に画期的な発明だと思います。最高です...と、言いたいところだが...
力を失った薄いテレビから離れていった人々はインターネット仮想空間の世界で芸のない素人の動画に一喜一憂する日々を送っている。雲の上の芸能界と現実世界との歪んだパワーバランス。
その世界では
誰かの歌を歌ってみた人がいて
人の悪口を言う人がいて
法に触れるか触れないかの悪戯をして
雲の上の世界の断片を無断でアップロードしている
必要悪すら必要のない世界
その世界では
いかなる理由がなくても
発砲した者が出世するようだ
台頭する不良外刻人
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